餅は餅屋

餅は餅屋

 

昔は、年末になると多くのご家庭や地域で「餅つき」をしていたと思います。私も子供のころは、地域の恒例行事として、大人も子供も一緒になって「餅つき」をしていました。大人になってからも、自治会やPTA、そして労働組合主催の「餅つき」に参加していました。しかし、コロナ禍の今は、すべて中止となり、とても残念であります。

お餅ができるまでは、餅米を一晩、水で浸し、翌朝、せいろで餅米を蒸し、蒸しあがった餅米を、臼に入れ、杵でつき、手水を加え、又、杵でつきます。ついたお餅を、片栗粉をまぶし、細かく切って、そして丸めて、やっとでき上りです。  子供たちが、お米から餅になる瞬間を目の当たりできるのは良い体験です。そして、「餅つき」は、多くの人が協働しなければならないので、連帯感が生まれます。みんなで協力してできたお餅はとても美味しいものです。

しかし、いくら美味しくても、しょせん素人が作るものですから、形もバラバラで、自分たちが食べるには問題ないのですが、売り物にはなり得ません。やはり「餅は餅屋」なのです。

最近、マスコミでは「官製春闘」なる言葉がよく使われていますが、「春闘」は、「春季生活闘争」で、労働組合が組織決定した「要求」を掲げ、賃金はじめ労働条件の改善を求め、経営側と交渉・協議し、労使が自主的に決定すべきものです。政府が経営者団体に賃上げを求める権限もなければ、経営側が政府の求めに応じる責任もないのです。

労働組合法 第6条では、「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する」となっており、又、第7条には、使用者がしてはならない行為として、「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」となっています。

労働組合は、団体交渉する権限、労働協約を締結する権限があります。又、経営側は、労働組合が求める団体交渉に応じなければ不当労働行為となります。

これから始まる2022春闘は、責任と権限のある労働組合と経営側との交渉に任していただきたいものです。なぜなら「餅は餅屋」ですから。

 

※「餅は餅屋」:物事はそれぞれの分野の専門家に任せるのが良いという意味のことわざ。

 

フード連合 会長 伊藤敏行