語り継ぐ
語り継ぐ
夏休みは、家族旅行など、子供たちにとって楽しい思い出づくりの機会であります。
私たちが子供のころは、今のように、家族旅行はほとんどなく、親の故郷へ帰省するのが一般的でした。
私は、父方の祖母は同居で、母方の実家も自宅から近いため、親の故郷へ帰省する友達を羨ましく思ったものです。
夏休みに遠出できず面白くないところに、更に面白くなかったのは、毎年お盆になると、明治生まれの祖母が「戦争の話」をすることでした。
「B29が焼夷弾を落としてきた」「防空壕へ入って逃げた」「戦争中、食べる物が無くて芋の根を食べていた、今は、贅沢や」など、子供の頃の私は、「おばあちゃんの戦争の話、また始まった」と素直に聞くことができませんでした。
しかし、祖母の一方的な語りであっても、何となく話は、私の脳裏にありました。
大人になって調べてみると、私の出身地である大阪府堺市では、昭和20(1945)年3月~8月までの5次にわたり空襲(焼夷弾・爆弾・機銃掃射など)を受け、死傷者約3,000人、建物の全焼(壊)半焼(壊)は約19,000戸、罹災者70,000人を超える人的、物的に大きな被害となり、旧市域の62%に相当する面積が焦土化しました。
私たちの年代は、祖父母や両親が戦争体験者で、その実体験を聞くことができました。
戦後80年となり、戦争体験者が年々減少していきます。であるからこそ、戦争の悲惨さと平和の尊さを、次世代へ語り継ぐことが大切です。
私たちは、原爆投下された広島・長崎以外にも、多くの地域で戦争被害があったことを忘れてはなりません。
子供の頃の夏休み、祖母の話を素直に聞かなかった私自身の反省を込めて申し上げたい。
フード連合 会長 伊藤敏行